「一晩寝かしたカレーのこの旨さ。」
カレーが大好きなあなたへ、悲しいお知らせです。
カレーの入ったお鍋を常温のまま置いておくと・・・「ウェルシュ菌」の食中毒が発生しやすくなります。


「え〜・・・一晩寝かして食べちゃいけないの?」
残念に感じるあなたへ。
ウェルシュ菌の特徴と対策、一晩寝かしたカレーを美味しく安全に食べる方法をご紹介します。
※食中毒は100%防げるものではありません。あくまで対策の知識として頭に入れておいてください。
もくじ
煮込み料理で発生?!ウェルシュ菌の食中毒の発生の流れ

ウェルシュ菌は、人や動物の腸管、土壌や水中など自然界に生息している細菌。
家畜や農作物に菌が付着したまま煮込み料理を作り、菌が増殖したお鍋の中の料理を食べて発生。
10時間の潜伏期を経て、腹痛、下痢など、お腹の症状があらわれます。
集団給食、病院、レストランなど、大量調理で使う寸胴鍋は、底に酸素が入りにくいため、ウェルシュ菌が発生しやすい環境です。
家庭では、まとめて作って作り置きしておく場合、注意が必要です。
一晩寝かせたカレーが危ない?ウェルシュ菌の厄介なところは?
ウェルシュ菌の厄介なところは、以下の4つ
- 外観やニオイで気づきにくく加熱料理だからと油断しやすい
- 加熱しただけでは簡単に死滅しない
- 無酸素状態を好み、冷めた時に増殖する
- 腸内で毒素が発生する
外観やニオイで気づきにくく加熱料理だからと油断しやすい

「スパイスたっぷりの煮込み料理で食中毒なんて、信じられない!」
と、感じる方も中にはいらっしゃるでしょう。
香りが強く、濃い味のカレーは、見た目や色、ニオイでは判断しにくいため、油断しがち。
「加熱したんだから大丈夫!」
と、過信してしまい、口にしてしまうケースがとても多いです。
加熱をしただけでは簡単に死滅しない

おにぎりのご飯やお弁当のおかずの場合、75度で1分以上加熱すれば、ほとんどの菌が死滅すると、当ブログで紹介したことがあります。
しかし、ウェルシュ菌の場合、ただ加熱すれば解決というわけにはいきません。
「加熱」は、食中毒菌が死滅する方法として効果的ですが、ウェルシュ菌を加熱で死滅させるとなると厄介です。
ウェルシュ菌の怖いところは、強い芽胞を作るところ。
芽胞とは、100℃以上の高い温度では死滅しないバリアのこと。
耐熱性のバリアのため、ちょっとの高温ではなかなか死滅せず、生き残ってしまいます。
無酸素の状態を好み、冷めた時に増殖する

ここで質問。お鍋に残ったカレー、あなたはどうしてますか?
火を消して、お鍋のままコンロの上に置いて、翌日食べる前に再加熱していませんか?
これは、一番ラクな方法であり、一番してはいけないことです。
ウェルシュ菌は嫌気性菌で、酸素がない環境を好みます。
火を消してお鍋のカレーの温度がジワジワ下がったときに、芽胞が増殖していきます。
ウェルシュ菌が最も好む温度は、40℃〜50℃。
菌が快適だと感じると、10分間隔で増殖していきます。
トロッと重みがあるカレーをお鍋の中に放置していると、酸素が入りにくい環境が出来上がります。
お鍋の中心部や鍋底は、酸素が入りにくく、嫌気性菌のウェルシュ菌にとっては絶好の増殖ポイント。
無酸素状態が長く続くと、ウェルシュ菌は増殖を繰り返してしまいます。
腸内で毒素が発生する

お鍋の中で大量に増殖したウェルシュ菌を口にしまったら、腸内で増殖と芽胞の形成をします。
腸内に達した芽胞から「エンテロトキシン」という毒素が産生されます。
エンテロトキシンによって、腹痛や下痢などの症状が起きてしまいます。
「一晩寝かしたカレーが美味しい、しあわせー!」
になるはずだったのに・・・まさか食中毒で寝込んでしまうとは・・・。
こんな悲劇を招いてしまわないために、次の対策を押さえておきましょう。
ウェルシュ菌対策は家庭でできる。菌を増やさないポイント。

ウェルシュ菌対策のポイントを5つに分けてみました
- すぐに冷やして温度を下げる
- 適度に混ぜる
- 長めに再加熱する
- 大量に作りすぎない
- 小分けで保存する
すぐに冷やして温度を下げる

ウェルシュ菌を増やさないために、増殖しやすい温度帯を避けることが大切です。
急速に冷やすことで、芽胞を作るチャンスを減らすことができます。
室温で長時間保存せず、すばやく粗熱を落とし、お鍋の中の温度を下げましょう。
火を消したあと、濡れた布巾を敷いて、お玉でグルグルとかき混ぜると、温度が下がりやすくなります。
ウェルシュ菌は、高温から常温へゆっくり冷めていくときに、ジワジワ増殖していきます。
ゆるやかに温度が下がると、無酸素の状態が長く続くため、増殖を促すことになります。
適度に混ぜる

ウェルシュ菌は酸素が大嫌いです。
混ぜることで、お鍋の中へ酸素を取り込むことができます。
お玉やレードルの役割は、料理の温度を均一にしたり、料理を盛り付けるだけではありません。
- カレーを調理している時
- 出来上がったカレーを冷やす時
- 保存したカレーをお鍋を使って再加熱する時
ウェルシュ菌を撃退するために、マメに混ぜて、酸素をたっぷり取り込みましょう。
長めに再加熱する

お鍋にたっぷり入ったカレーを盛り付ける場合、必ず再加熱をして、アツアツを味わいましょう。
当日食べるカレーも、ウェルシュ菌の食中毒になる可能性があります。
再加熱をするポイントは
- 具材まで熱をしっかりと通す
- 一気に加熱してすばやく温度を上げる
- 鍋底からしっかりと混ぜる
- 弱火で10分〜15分を目安にする
ウェルシュ菌の芽胞を作っているため、ちょっとの加熱では簡単に死滅しません。
低温の状態からサッと高温に上昇させることで、室温に近い温度帯を避けることができます。
当日作ったカレーで、常温で冷ましている時間が長い場合、再加熱の時間を長めにすると安心です。
再加熱の時間が長くなると、鍋底が焦げやすくなります。
鍋底から適度に混ぜて、必要に応じて差し水をするとよいでしょう。
大量に作りすぎない

ウェルシュ菌は、酸素が循環しにくい大量調理に発生しやすい食中毒です。
大量調理や作り置きをしなければ、発生する可能性をガクンと下げることができます。
煮込み料理を作る際は、食べきれる分だけ調理した方が安全です。
カレーを作る場合は、半パックの量のルウを使ったり、食べきりサイズのカレールウを選ぶなど工夫をすると良いでしょう。
小分けで保存

「子どもが夏休みだし・・・」
とか、たくさん作りたいときもありますよね。
余ったカレーを保存するときは、小分け容器に分けて保存しましょう。
小分けにすることで、
- 温度が急速に低下する
- カレーの中に酸素が入りやすくなる
ウェルシュ菌が増殖しにくい環境になります。


アイラップに入れて、袋越しで保存容器を重ねて、私は保存しています。
アイラップは、耐久温度120℃の保存袋。電子レンジや湯煎で袋ごと解凍することができます。
ホーロー容器なら、野田琺瑯のポーチカ。お鍋タイプの保存容器で、2〜3人分のカレーを冷蔵庫に保存するのにちょうど良い大きさです。
余ったカレーを移して、翌日このまま直火で加熱して、お昼ご飯に回しています。
※作ったカレーは、冷蔵で2〜3日、冷凍で1ヶ月以内を目安に食べ切りましょう。
美味しいカレーを楽しむために正しい保存方法で
「カレー大好きなのに、カレー食べるの怖くなった〜」
「今晩カレーだったのに、どうしてくれるのよー!(怒)」
という言葉が聞こえてきそう。
でも、国民食だし身近な料理だからこそ、正しい知識を持ち正しい保存方法を知っておくことが大切です。
カレーを食べたあと、お腹がゴロゴロとして調子が悪くなったことありませんか。
食べすぎだと思ったけど・・・「ウェルシュ菌だった!」なんてことも考えられますので、油断禁物。
ウイルスのように嘔吐や発熱を引き起こす菌ではなく、重症化することは少ないです。
免疫力の弱いお年寄りや小さな子どもが食べる時は、症状を引き起こしやすいのでご注意ください。
「いつもと違って調子が悪いな・・・」と思ったら、お医者様に診てもらってくださいね。
コスパも良いし子どもウケ抜群、栄養価が高く忙しいご家庭の強いミカタ。
カレーを食べれば今晩の夕食を乗り越えられるほど、我が家のカレー率の高さもハンパないです。(笑)
カレーも食べ物として生きています。美味しく安全に食べられる期間も限られます。
ご紹介したポイントを守って、一晩寝かせたカレーとお付き合いくださいね。